「うつ病」とはなにか

うつ病

うつ病とは?

2019年に「うつ病」と診断され、2カ月の間芸能界を休業した芸能人に、名倉潤さんがいます。現在は、芸能界に復帰し様々な番組で元気な顔を見せてくれていますよね。芸能界では、他にも岡村隆史さんや武田鉄矢さんなど多くの方々がうつ病を公表してきました。テレビでみる元気な姿からはあまり想像できないですが、うつ病は、体の病気と同じように、とても身近な病気なのです。

うつ病の有病率

世界保健機構(WHO)はうつ病の治療が必要となる人を、日本を含む世界各国で調査しました。
その調査から、我が国で定型的なうつ病にかかって治療が必要となる人は、全体の6パーセント強であることがわかっています。(引用:『「うつ」を治す』 )

50人に1人は一生涯にうつ病にかかると言えます。 また、うつ病は男性よりも女性の方がかかりやすく、女性がうつ病にかかるのは男性の約2倍です。女性が男性よりもうつ病にかかりやすいのは、妊娠や出産、介護などのライフイベントが多いこと、更年期障害といったホルモンバランスの変化が生じることなどが、理由として考えられています。

うつ病は珍しい病気ではない

うつ病は「こころの風邪」とよばれ、珍しい病気ではありません。体の病気やホルモンバランスの変化、ストレスフルな出来事などをきっかけとして、誰もが生じる可能性があります。しかし、うつ病は見逃されがちです。

WHOの調査では、うつ病にかかって医療機関を受診した人は三割以下ということがわかっています。

うつ病は自分で認識することが難しく、まわりで見ていてもわかりにくい病気です。ですから受診率が低く、病気にかかっていても病院に行かない人が多いので注意しなければなりません。(引用:『「うつ」を治す』 )

うつ病の人は、真面目な性格から、症状から仕事の失敗が続いても「自分の頑張りが足りないからだ」「もっと自分が頑張れば出来るはずだ」と考えてしまいがちです。 周りの人へも「迷惑をかけたくない」と気を遣う気持ちが人一倍強く、頑張っていつも通りの態度で接しようとします。そのため、自分も周りも気づかずに、受診が遅れてしまうことがあるのです。

また、うつ病は体の症状もあることから、精神科以外の科を受診することも多いでしょう。精神科以外の科の先生がうつ病を疑ってくれればよいですが、見逃されてしまうこともあります。

うつ状態とうつ病

失恋したり、試験で失敗してしまったりすると、「もういやだ・・・」「何もしたくない」と誰でも落ち込むことはありますよね。普段わたしたちが経験するような、落ち込んだ気持ちとうつ病は何が違うのでしょうか。基本的には、同じ構造を持ちますが、3つの点で違いがあるようです。

第一「うつ病の場合、必ずしもひどいストレスに出会っていないのに、ひどくゆううつになる」
第二「考え方が正常者とは質的に違う」
第三「ゆううつの持続が極端に長い」

(引用:『新版 うつ病をなおす』)

ストレスとなるような大きな出来事を経験していないのにとても落ち込んでいたり、またその期間が長いと、うつ病と考える材料となるようです。

現在診断する上で、基準とされている憂うつの期間は2週間以上が目安となっています。 考え方が質的に違うというのは、仕事で大きな失敗もないのに「自分は何も出来ないんです、失敗ばかりで、もう死ぬしかない」など、事実にもとづかない考えに駆られてしまうことを言います。

うつ病の症状

代表的なうつ病の9症状

うつ病は、アメリカ精神医学会が作成した『精神障害の診断・統計マニュアル』に基づいて診断が行われます。現在は第五版が出版されており、英語名(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)の頭文字を略して、DSM-5と呼ばれています。

DSM-5を用い、いくつうつ病の症状が当てはまるかによって診断していきます。代表的なうつ病の9症状をDSM-5に沿ってみていきます。

<代表的なうつ病の9症状>
① 一日中気分がふさぎ込んでいる
② これまで好きだったことに興味が持てなくなる
③ 体重や食欲が大きく変化する
④ 眠れなくなったり寝すぎてしまったりする
⑤ 他の人の目にもわかるほど落ち着かなくなったり、動きが遅くなる
⑥ 倦怠感やエネルギーの欠乏感をほとんど毎日感じている
⑦ 自分をやたら非難するようになり、自分には価値がないと考える
⑧ 決断ができず、集中することもできない
⑨ 死についてよく考える    
(引用:『「うつ」を治す』)

このような状態が2週間以上続いていることが、うつ病診断の目安となっています。気持ちが落ち込んでいる人であれば、一つや二つ該当する項目があるでしょう。また、ネガティブな性格傾向が強い人もいくつか該当するかもしれません。

該当する項目が多ければ多いほど、程度としては重くなりますので、たくさんの項目が該当した人はためらわずに診察を受けてみてください。

体の症状もある

うつ病は心の症状だけでなく、体にも症状が出ます。心の症状に劣らず大切な症状となります。

うつ病で生じる体の症状
・食欲減退や過食
・不眠や過眠
・頭痛
・目のかすみ
・耳鳴り
・胸部の圧迫感
・息切れ
・肩こり動悸
・胃部不快感
(引用:『そのからだの不調、ホントはうつですよ』)

どれかひとつだけ見られることはごく稀で、いくつかの症状が同時にみられることが多いのがうつ病の身体症状の特徴です(引用:『そのからだの不調、ホントはうつですよ』)。

また、心の症状よりも体の症状の方が強く出てしまううつ病のことを「仮面うつ病」と呼び、体の症状に隠れてうつ病が見逃されてしまうことがあります。

「なんだか最近眠れない・・・」「最近すごく体重が減った」「肩こりがひどくて仕方がない」などの症状があり、体の原因が見つからなければ、一度うつ病を疑ってみることも大切です。

周りの人が確認できるうつ病のサイン

うつ病は、真面目で頑張り屋な性格から、仕事でミスをしても「ミスをするのは、自分の頑張りが足りないからだ」と、自分がうつ病にかかっているとは気づきにくい傾向があります。そのため、周囲の人が気づいてあげることも大切です。

まわりの人からわかるチェックポイント
1)日常行動
・口数が少なくなる
・イライラしている
2)人間関係
・自分の中に閉じこもりがちになる
・つき合いが悪くなる
・気弱になる
3)仕事
・仕事が遅くなる
・集中力が低下する
・能率が落ちる
・ミスが増加する
・意欲が低下する
・遅刻・欠勤が増える
・朝方、休日あけに調子が悪い
4)身体症状
・睡眠障害(入眠困難、途中覚醒、早期覚醒)
・食欲低下
・不定の身体愁訴
・全身倦怠感
・頭痛、眼痛
・肩こり
・胃痛、下痢、便秘
・動機、息苦しさ
(引用:『「うつ」を治す』)

うつ病の人は、人に配慮することが出来る性格の人が多く、つらくてもそれを見せないように頑張ってしまったりと、周囲の人もなかなか分かりにくいことがあるかもしれません。

早く見つけるために注意すべき大事な点は、日常生活において、いつもと違う状態が続くこと(引用:『「うつ」を治す』)だそうです。このチェックポイントのような状態が、しばらく続いている場合は、まわりの人が声をかけてあげてください。

うつ病の原因


うつ病は、ストレスとなる出来事や本人のストレス耐性、遺伝的要因、ホルモンバランスなどが絡まりあって生じるとされていますが、原因は明らかになっていません。

しかしながら、脳内の神経伝達物質の量が少なくなることによって、うつ病を発症するという<モノアミン仮説>が現在のところ支持されています。

モノアミンは、神経伝達物質の総称です。特に、うつ病に関連した神経伝達物質として、セロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンがあげられています。

セロトニンは、食欲、性欲、睡眠など、人間の本能に直接関わる物質で、...(中略)... セロトニンの量が減少すると、イライラや不安、睡眠障害が起こり、衝動的で攻撃的になり、自殺や自傷行為などを起こしやすくなります。
ノルアドレナリンは、脳を覚醒、活性化し、意欲や集中力、記憶などと関わっています。
(引用:『そのからだの不調、ホントはうつですよ』)

ドーパミンは意欲や快の感情などに関わっています。これらの神経伝達物質が減少することで、うつ病の症状が生じていると考えられているのです。

うつ病になりやすい人


ある病気につながりやすい性格を<病前性格>と呼びます。うつ病になりやすい病前性格は、メランコリー親和型性格といい、メランコリーとは英語で「気分が晴れない、ゆううつ」という意味です。

メランコリー親和型性格
〇責任感や義務感が強く、仕事熱心で完璧主義
〇真面目で几帳面
〇人間関係を重んじ、人を傷つけないと配慮する
〇ルールや秩序に束縛されがち
〇柔軟性に欠け、環境や状況の変化に対応するのが苦手
(引用:『うつ病の現在』)

真面目で頑張り屋、人に気を遣うこともできるという、会社では大変ありがたい存在です。しかし現在は、真面目に熱心に仕事をすることを良しとする風潮が、以前より少なくなったのではないでしょうか。

社会が大きく変化し、価値観が多様化する中で、真面目や一生懸命だけでは必ずしも評価されなくなり、会社が守ってくれなくもなった。...(中略)... 長野県精神保健福祉センターの小泉典章所長(臨床精神医学)は「柔軟性に欠ける面があるメランコリー親和型性格の人が、このような状況の変化に対応できずに、うつ病を発症することが多い」と説明する。(引用:『うつ病の現在』)

2019年に「わたし、定時で帰ります」というドラマが放送されましたが、ドラマでは定時で帰ることをモットーとした女性が描かれています。このドラマのように残業をせずにプライベートと仕事の両立を目指したり、あるいは早期退職をして第二の人生を送ったり、遊ぶように仕事をする人がいます。

<働く>ことの意義が、個人に委ねられ、その人らしく働くことが以前よりも重視されているのです。

そのため、真面目に熱心に仕事をする人が、「頑張っているのに報われない」と、時代の流れに対応できず、無力感を感じてしまうのかもしれません。

また、メランコリー親和型性格の人について、「うつになりやすい人」の著者加藤氏は、“なぜ社会的に望ましい行動をしようとするのか”に着目し、周囲の人から「認められたい」からまじめに仕事を頑張っていると指摘しています。心の葛藤を、仕事をすることで解消しようとしていることが問題と述べています。(参考:『「うつ」になりやすい人』)

「認められたい」という気持ちは誰にでもあるかと思います。しかし、今の自分を認められず、あまりに理想が大きすぎると、常に心の中に欠乏感を抱き、欠乏感を埋めるために仕事に打ち込んでしまうのです。

まとめ


今回は、うつ病の症状や原因、なりやすい人についてご説明してきました。うつ病は身近な病気ですが、まじめで頑張り屋な性格から、なかなか自分でも周囲にも気づかれず、抱え込んでしまうことがあります。

もし今とてもつらい気持ちでいたら、1人で抱え込まずに誰かに相談したり、病院を受診しましょう。

また、近くにうつ病が疑われる気になる人がいれば、1度受診を勧めてあげてください。

うつ病は自覚しにくいし、まわりで見ていても分かりにくい病気です。しかし治療すれば良くなる病気ですので、早めに見つけて治療することが大切です(引用:『「うつ」を治す』)

早めに見つけ、受診へつなげてくださいね。

この記事を書いた人

匿名希望

地方在住、病院勤務の公認心理師&臨床心理士です。
悩んでいる方のお手伝いができるよう日々勉強しています。

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