腸は第二の脳?!腸がメンタルヘルスに与える驚くべき影響とは

メンタルヘルス

概要

腸の環境を整えることで、肌荒れが良くなったり、ダイエットに効果的であったり、ということはよく聞きますよね。また、免疫力の向上にも効果があるため、体が元気になり、風邪をひきにくくなるとも言われています。

最近では、乳製品会社でも免疫力向上をアピールした商品をたくさん販売しています。R-1ヨーグルトは、インフルエンザウイルスなどと戦い、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)という体のがん細胞やウイルス細胞を壊す細胞の活性化が期待できるそうです。

このように腸の調子を健康に保つことは、“体にとって”非常に良い効果がありますが、“心にとって”はどうなのでしょう?

今回は腸の調子がメンタルヘルスへ与える影響についてみていきたいと思います。

腸は第二の脳?

「腸は第二の脳」と呼ばれている

体の中の心臓や肺などの臓器は、脳からの命令によって動いています。しかしながら腸は、脳からの命令がなくとも自分で消化や排便などの活動を行い、脳からの命令を必要としない自立した器官です。そのことから「腸は第二の脳」と呼ばれています。

また、人の脳は神経細胞の集まりで出来ていますが、実は腸にも神経細胞が存在します。

ヒトの食道から胃を通って小腸・大腸につながる消化管にはざっと数億個の神経細胞が存在するといわれています。ヒトの脳にはおよそ1000億、脊髄には数億の神経細胞が存在するので、腸には脊髄と同じくらいの数の神経細胞があるということになります。
(引用:脳腸相関LABO.-資生堂

数多くの神経細胞が腸にも存在しているということですが、どんな神経細胞が存在しているのでしょうか。神経細胞の代表格、幸せホルモン“セロトニン”をご存知の方は多いと思います。うつ病の原因の一つにセロトニンの減少があり、セロトニンは心の健康に非常に重要な働きをします。

脳腸相関LABO.によれば、セロトニンは、腸に約90%、血液中に約8%、脳に約2%存在しているとあります。腸で、セロトニンの“もと”となるものが作られ、それが脳まで伝達し、脳でセロトニンが作られ、分泌されるそうです。

そのため、腸内の働きがスムーズであればあるほど、セロトニンの“もと”がたくさん作られ、十分な量のセロトニンが脳から分泌され、気分の安定が望めるのです。

脳腸相関とは?

脳腸相関とは、「脳から腸へ」だけでなく「腸から脳へ」の方向をも含んだ、双方向の影響を想定した考え方です。

過敏性腸症候群というストレスが原因とされる心身症の捉え方も、この脳腸相関が元となっています

・欧米で心身症が概念形成されたのは、Walter B.Cannonが情動の中枢説を確立した時代である。・・・脳から消化管に向かう信号が重要とする研究が進んだ。

・しかしその一方、過敏性腸症候群においては、・・・消化管から脳に向かう信号の重要性、ならびに内臓知覚過敏からストレス感受性が変容していく過程の重要性が明らかになりつつある。

・過敏性腸症候群は現在、William Jamesによる情動の末梢説を復活させ、かつ、その妥当性を証明する臨床の病態となったといえる。

(引用:ストレスと脳腸相関の法則を探る

Walter B.Cannonのキャノンバード説とは、「悲しいことがあったから泣く」というように外からの情報をまず脳で知覚し、その結果、体が反応するとするものです。一方で、William Jamesのジェームズランゲ説とは、「泣くから悲しい」というように、体の変化を脳が知覚することで、悲しさが生じるとしたものです。

脳から腸へ、そして、腸から脳へと双方向に信号を送る「脳腸相関」を重視することは、過敏性腸症候群を含む心身症の研究の基本と言えます。

腸内環境がメンタルヘルスへ与える影響とは?

脳腸相関へ影響する新しい要因「腸内フローラ」

脳腸相関を軸として研究をすすめていくことが、心身症研究のベースとなることを述べましたが、最近新たに「腸内にフローラ」に着目する研究が注目されています。

“脳と腸の相関”を研究するにあたっては、「脳と腸の関係だけをみるのではなく、腸内フローラの存在を無視できない」とする理解が生まれ、新たな研究領域として多くの注目を集めるようになったのです。

(引用:脳の機能に関与する腸内フローラと「脳腸相関」)

腸内フローラとは、一度は聞いたことがあるはずです。腸の細菌の集まりのことですが、腸にはさまざまな細菌が存在しており、それらの細菌がお花畑(flora)のように腸に並んで見えることから、腸内フローラ(別名:腸内細菌叢 ちょうないさいきんそう)と言われるようになりました。

腸内フローラからストレスへの影響を調べた九州大学医学部須藤教授らによる、マウスの研究があります。

無菌マウスと通常のマウスを同様のストレス下に晒すと、無菌マウスの方が“ストレスホルモン”を多く分泌していたことがわかったそうです。須藤氏は、腸内フローラを持たないマウスは、腸内フローラを持つ通常のマウスと比べてストレスに対して過敏であると述べています。

さらに、須藤氏は“無菌マウスに認められる多動や高い不安といった行動特性は、通常の腸内細菌を移植することによって正常化するということが確かめられた”と説明しています。

以上のような研究から、「腸内フローラ」が、“ストレス”の感じ方、つまり脳へ影響すると仮説をたてることができるでしょう。そしてまた、腸内環境を改善することで、ストレスから生じる不安などが軽減される可能性も考えられます。

腸内フローラの効果が明らかにされたことで、現在では腸内フローラと認知症や、腸内フローラとうつ病といった精神疾患との関連性についての研究が、精力的に進められています。

腸内環境とメンタルヘルス

これまでに腸が第二の脳と呼ばれる理由や、脳と腸の関係、そしてさらに腸内フローラの存在についてご紹介してきました。要点をまとめます。

☆脳と腸は双方向に信号を送り合う「脳腸相関」がある
☆腸には神経細胞の一つ“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニンの90%が存在
☆腸内フローラの有無がストレスへ影響

研究の流れとして、ストレスを感じると体の調子が悪くなるといった「脳から腸へ」の方向性をみた研究に加えて、現在は、「腸から脳へ」といった方向性が着目されているようです。さらに「腸内フローラ」の脳への効果から『腸内環境』を良く保つことへの重要性も示唆されているように思います。

これらの研究の流れから、腸内環境を整えることは、メンタルヘルスの改善に役に立つと言えるでしょう。

腸内環境を整える食事

腸内環境を改善する方法として、よくあげられるのは食事です。

腸内環境を整える食品には「プロバイオティクス」「プレバイオティクス」を含んだものがあります。

プロバイオティクス:腸内粘膜表面の微生物や酵素のバランスを整え、免疫機能を改善させる微生物製剤のことであり、ヨーグルトや乳酸菌飲料、整腸薬などに利用されている。

プレバイオティクス:小腸下部や大腸で元々存在している腸内細菌、あるいはプロバイオティクスとなりうる有用な菌の増殖を促進する物質のことをいう。代表的なものとして、オリゴ糖や食物繊維などがあげられる。

(引用:食事がヒトの腸内細菌叢組成と生活習慣病に及ぼす影響

プロバイオティクスは乳酸菌やビフィズス菌といった善玉菌そのもののことで、腸内フローラのバランスを整えてくれます。ヨーグルトやみそ、しょうゆなどの発酵食品から、摂取することができます。腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌を減少させる作用があるそうです。

ちなみにヨーグルトは毎日継続的に食べることが重要です。乳酸菌は、腸に届くのは摂取したうちの一部であるため、毎日食べないとなかなか効果を実感できないと言われています。さらに、自分の腸に合わない場合は外に排出されてしまうので、継続的に2週間程度食べてみて、もし効果を感じられなければ別のヨーグルトに変えてみましょう。

プレバイオティクスとは、簡単に言えば善玉菌のエサ、栄養源であり、善玉菌を育てます。プレバイオティクスは、オリゴ糖や食物繊維などの食品から摂取することが出来ます。

食物繊維には「水溶性」「不溶性」の2つの種類があり、水溶性は便をやわらかくする作用が、不溶性は便のかさを増すことで腸のぜん動運動を促進させ、便通を促す作用があります。

☆オリゴ糖と食物繊維が含まれている食品(プレバイオティクスの摂取)☆
オリゴ糖を含む食品:きなこ、いんげん、ごぼう、小豆、玉ねぎ、はちみつ、バナナ、にんにくなど
水溶性食物繊維を含む食品:キウイ、りんご、おくら、ほうれん草など
不溶性食物繊維を含む食品:さつまいも、きのこ、わかめ、もち麦など

(引用:明治ヨーグルトライブラリー

まとめ

お腹が痛くなった時には「ストレスかな?」「精神的なものかな?」と、脳から腸の方向にみることが多かったように思います。

しかし、脳腸相関では、脳から腸へ向かう信号だけでなく、同時に、腸の環境が悪いことでストレスを受けやすい脳になっているのではないかという、腸から脳へ向かう信号も捉えていきます。

仏教では昔から人のこころと体については「心身一如」と言い、こころと体はひとつであり、分けられないものと考えられてきました。最近は、こころと体は一つであるとする考え方が再び注目されているのではないでしょうか?

お腹の調子の悪さとストレスを感じているとするならば、ストレスを対処するだけでなく、腸内環境のバランスにも着目することで、相乗的な改善が期待できるかもしれませんね。

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この記事を書いた人

匿名希望

地方在住、病院勤務の公認心理師&臨床心理士です。
悩んでいる方のお手伝いができるよう日々勉強しています。

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