「嫉妬」の起こるメカニズムと対処法

メンタルヘルス

はじめに

アジアに暮らす人々は欧州に暮らす人に比べて、集団思考であると言われています。

「自分がどうしたいか」ではなく周りといかに協調できるか、つまり「空気を読む」ことが重要視されているというわけです。言い替えれば、それだけ他人に意識を向ける時間を多くとらなくてはいけないといえます。

他人に意識を向けるとどうしても起こってしまうのが自分との比較。その比較は優越感や劣等感に繋がり、そして「嫉妬」が生まれます。

今回は身近な存在、「嫉妬」について取り上げたいと思います。嫉妬のメカニズムから嫉妬の意外な一面まで、きっとイメージとは違った側面を見せてくれるのではないかと思います。

嫉妬とは何か?


嫉妬とは、

①自分よりすぐれた者をねたみそねむこと。
②自分の愛する者の愛情が他に向くのをうらみ憎むこと。また、その感情

引用:広辞苑

だといいます。仕事や恋愛の場だけでなく、友人関係といった多様な場面に持ち込まれるという意味では非常に関心を集めやすいテーマではないかと推察されます。

それは心理学の分野においても例外ではなく、嫉妬についての研究は20世紀初頭から比較的多く見受けられるそうです。

心理学そのものが日本に入ってきたのが江戸時代後期~明治初頭(19世紀後期)頃。そこから考えると、古くから嫉妬というものに対して人々は関心を寄せていたことがわかります。 

嫉妬の種類について

一括りに「嫉妬」といっても広辞苑に意味が2通りあるように、ニュアンスの違った使われ方をすることがあります。

『嫉妬を味方につける心理術』によると嫉妬は2つの意味に大別できるといいます。それは、

自分が持っていないものを他人が持っていることからくる妬みや羨望の感情
自分がすでに手にいれたものを失うのではないかという不安や恐れ

引用:『嫉妬を味方につける心理術』

の2種類です。別の単語に当てはめると前者は羨望、後者は妬みと言い換えられます。このように考えるとすると、

「羨望」は「妬み」と比べられる場合においては、「妬み」に比べ対象への悪意や敵意が薄いものとして弁別されることが多いように見受けられる。
引用:嫉妬研究の概観と展望

といわれることもあり、意味合いの含む悪意によっても使われ方に違いが出てくるようです。

また、嫉妬には病気に起因する 「異常な嫉妬」 というものもあります。正式には 「嫉妬妄想」. といわれ、アルコールなどの依存症や統合失調症、認知症などといった病の症状として現れます。見分け方としては、

正常な嫉妬者は適度に嫉妬喚起場面に対して反発的な「情動」を示し、

恋人との関係を維持しようと、「行動」においてライバルと恋人の関係を阻むような、防衛的な行動をとり、関係を維持しようとする

が、一方で病的な嫉妬者は、

想像上の嫉妬を繰り広げる「認知」、高い「情動」的な反応、そして「行動」において恋人について調べ上げ、不実の証拠を追い求めるような、探知的な行動を示す


引用:嫉妬研究の概観と展望

というように記されています。まとめると、恋愛場面において、一般的な嫉妬の場合は恋人の気持ちが他の異性に向かないように「守る」ような行動をとるのに対し、病的な嫉妬の場合は積極的に浮気の証拠を「探す」といった行動をとるようです。

嫉妬はどうやって起こるのか?


では、次に嫉妬と自由の論文を基に嫉妬が発生するまでの段階を3つに分けて紹介していきたいと思います。段階は以下の3つです。

①自分と他人のイメージを重ねてしまう
②重ねた他人のイメージと本来の自分の差を感じてしまう
③その差を「奪われた」と解釈する

①自分と他人のイメージを重ねてしまう

日常生活では、自分でも気づかないうちに自分と他人を重ね合わせてしまうという現象がよく起こるそうです。自分が抱く他人のイメージを自分のイメージとして捉えてしまうわけです。そしてこの現象は

心理的な距離が近いほど、この重ね体験は起こりやすい。
引用:嫉妬と自由

と述べられています。例えば、特定の恋人のいない人が道を歩くカップルに嫉妬するというシチュエーションを想像してみてください。

恋人がいない人は恋人のいる同性を妬むことはあっても、魚の夫婦を見て嫉妬することはまずないと思います。

これは魚と人間では心理的な距離が遠く、自分を重ねづらいためです。

言い替えれば自分と近い存在、例えば年齢が近かったり容姿が似ていたりする同性に対しては自分を重ねやすいため、嫉妬しやすいといえます。

②重ねた他人のイメージと本来の自分の差を感じてしまう

①のように、人は気づかないうちに嫉妬の対象と自分を重ねてしまいます。

しかし、他人のイメージを重ねた自分と同時に本来の自分も存在しています。

仮に他人のイメージ(に重ねた自分)を80点、本来の自分を30点と評価しているとしましょう。すると、何かのきっかけで本来の自分を意識したとき、今まで80点だったイメージが一気に30点に落ち込んでしまいます。

この50点分の落差が

妬みに特有の恥辱的な自意識、恥辱的な自己感情をもたらす
引用:嫉妬と自由

原因になるといわれています。

③その差を「奪われた」と解釈する

その後、その落差を「奪われた」と感じてしまったときに妬みは起こります。

上記の例ならば、恋人がいることを「見せびらかされた」と感じてしまえば被害感や憎しみを抱き、それが妬みになるというわけです。

ただし、他人に重ねた自分のイメージと本当の自分に落差を感じた人がすべて相手を妬むわけではなく、

「悲しい」と感じるだけならば、それは妬みにならない
引用:嫉妬と自由

と述べられています。恋人を見せびらかされたという認識ではなく、恋人がいない自分を「悲しい」と感じたとすれば嫉妬という感情は起こらないのです。

以上の①~③の段階を経て、人は特定の人物に嫉妬心を抱き、妬ましいと思うのです。

嫉妬をしたら良いこともある?


一般的に嫉妬はネガティブなものであるという印象が強いと思います。現に、

嫉妬を過激に経験する場合、嫉妬者には多大なストレスがふりかかる。また多大な嫉妬の処理過程がパートナーやその関係に対して不適切な形を取っていれば、嫉妬者の周囲にもストレスが拡大する。
引用:嫉妬研究の概観と展望

という見解を示す論文も存在します。

嫉妬は嫉妬を抱いた本人だけではなく、場合によっては周囲の人間にも悪影響を及ぼす可能性があるのです。

しかし、嫉妬という感情が悪影響しか及ぼさない不要なものであるとすれば、現代まで受け継がれてきているはずがありません。ここでは嫉妬の役に立つ側面を2つみていきたいと思います。

①遺伝子を残しやすくする

進化的な側面からみると、嫉妬は

生物としてのヒトが自分の遺伝子や子孫を残すのに非常に重要で役立つ手立てとしても考えられている。
引用:嫉妬研究の概観と展望

といいます。具体的には、嫉妬心をみせることで相手が他の異性に心変わりすることを未然に防ぐといった役割です。

男性からすると、相手の女性から生まれた子どもが他の異性の子どもだった場合、自分の遺伝子を残すことに繋がらないため、育てるのに使った労力が全て無駄になってしまいます。

また女性からすると、相手の男性が他の女性へ心変わりしてしまうことは自身とその子どもにとって不利益になってしまいます。

そのため、男女ともにお互いの浮気の抑止力として嫉妬を抱き、相手を自分のもとに留めておこうとするのです。

②関係の満足感を高める

嫉妬してしまった際にパートナーにどのような行動(嫉妬したことを話さない・相手に嫉妬させるようなことをするなど)をとるか、ということを調査した実験において、

嫉妬を感じたとしてもそれを衝動的に嫌味や暴力といった形で伝えるのではなく、適切に処理することができれば関係の満足感や幸福感は高められる可能性が示唆されている
引用:嫉妬研究の概観と展望

つまり、「嫉妬した」というネガティブな感情をうまく相手に伝えられた場合、2人の関係の満足度が高まるという良い効果があるということができます。

嫉妬とうまく付き合っていく方法は?

嫉妬には良い面があるとはいえ、嫉妬している自分が好きという人はいないと思います。

では、嫉妬心を抱いても我慢すればよいのかというとそうではありません。嫉妬を悪い感情とみなして「嫉妬をしてはいけない」と抑制してしまった場合、

抑制はかえって弊害をもたらすことがある。
嫉妬的ステレオタイプの抑制における代替思考方略の効果

といわれています。

嫉妬してはいけないと禁止することで、かえってその嫉妬は強くなってしまうのです。

こういった現象を 「リバウンド効果」 と呼びます。このことから、嫉妬という感情はただ抑制するのではなく、うまくコントロールすることが大切だといえます。この項目では嫉妬への対抗策を2つ探ってみたいと思います。

①熱中できるものを持つ

目の前に自分にないものを持った人が現れたとして、即座に対抗心をむき出しにして食って掛かる人は少ないと思います。それは、

嫉妬には時間をかけて妄想を育てる過程が必要
引用:『嫉妬を味方につける心理術』

であるからだといいます。

つまり裏を返せば、妄想を育てる時間があった人が嫉妬をするといえます。

嫉妬で悩んだ際は嫉妬を暇な時間のせいにして、熱中できる何かを探すというのも1つの手であるということができそうです。

②偏った先入観を捨てる

その人に対する誤った見方が嫉妬心をよりかき立ててしまうこともあります。一度「この人は嫌な人だ」と思ってしまえば、それを肯定するようなことばかり目についてしまうのです。その先入観をリセットするためには、

ユーモアやジョークの感覚を身につける
引用: 『嫉妬を味方につける心理術』

という方法があります。

ユーモアやジョークを通して別の角度から相手を見ることで、一方的な見方から離れることができるという効果があるのです。

嫉妬したときこそ、偏った先入観を捨てるために相手を別の視点からみることが重要なのです。

まとめ

ここまでご紹介した内容をまとめると、

● 嫉妬には種類があり、「羨望」「不安や恐れ」「病的なもの」という意味合いで分類できる
● 嫉妬が起こるのは「自分と他者のイメージを重ね」てしまい、そのうえで自分と他人の差を「奪われた」と感じたとき
● 嫉妬は「遺伝子を残す」「2人の関係を維持する」のに役立つという良い側面がある
● 嫉妬への対処は「熱中できるものを持つ」「偏った先入観を捨てる」のが効果的

ということになります。身近な感情である「嫉妬」を掘り下げてみると、意外な側面があったり、不思議なメカニズムがあったりと多面性のある面白い感情であったと思います。

嫉妬をバネにして偉業を成し遂げた人もいれば、嫉妬で身を滅ぼした人もいます。感情のままに踊らされるのではなく嫉妬をコントロールできたとき、また新たな視点が手に入るのではないかと思います。

この記事を書いた人

こしあん

心理学科卒のリラクゼーションセラピスト。 心の不調にも身体の不調にも向き合っていきたいです。 ストレス発散法はミュージカル鑑賞とミステリー小説。

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